3月の国会で、インボイス制度の税負担や事務負担を緩和する措置が成立したので、主要項目を確認します。
1. 小規模事業者に対する納税額の負担軽減措置(2割特例で税額大幅減)
事例:サービス業で売上700万円(消費税70万円)経費150万円(消費税15万円)
実額課税 |
70万円-15万円=55万円 | 適用期間は3年間 令和5年10月~令和8年9月の属する各課税期間 |
簡易課税 |
70万円-35万円=35万円 | |
納税額緩和特例 |
70万円×2割=14万円 |
2. インボイス制度登録申請手続きの柔軟化
条 件 |
提出期限や申請日が見直しされる |
令和5年10月1日から登録を受ける場合 | これまでの3月31日→5年9月30日まで提出 |
免税事業者が登録申請する場合 | 課税期間の初日から起算して15日前まで |
インボイス業者が登録を取消する場合 | 課税期間の初日から起算して15日前まで |
令和5年10月1日以降にインボイス事業者登録をする場合 | 登録を受けようとする日から起算して15日前まで |
3. 1万円未満の値引き等は「返還」のインボイスの交付義務が免除
インボイス制度導入後に、買い手側が振込手数料を差引いて代金を支払う場合は、「売上」の値引きとして返還インボイスの交付が予定されていました。
事務負担が増大し、経理処理方法も複雑になることへの緩和策として⇒
※金額が「税込価額1万円未満の場合は、返還インボイスを交付する義務がない。」と改正されました。
対象者はすべてのインボイス登録事業者であり、これまでと同じ取り扱いが可能となります。
4. 売上が1億円以下の事業者の1万円未満のインボイス保存義務が不要
インボイス制度はインボイスの書面の保存も義務付けられ、事務負担の増大が懸念されていました。
小規模事業者への配慮として①期間は令和5年10月~令和11年9月までの6年間限定で、②基準期間における課税売上高が1億円以下の事業者か、特例期間における課税売上高が5千万円以下の事業者に限定して、③税込み1万円未満の課税仕入れはインボイスの保存がなくても帳簿保存で仕入税額控除ができます。
(文責 税理士 大和田利明)
3月10日から2023年度の小規模事業者持続化補助金(第12回公募)の申請受付がスタートしました。今回の目玉はインボイスへの対応を迫られる免税事業者を対象にした「インボイス特例」です。通常枠や特別枠で申請を検討している人がインボイス転換事業者の場合、最大50万円の上乗せ支給を受けられます。
同補助金は、常時使用する従業員数が「商業・サービス業(宿泊業、娯楽業を除く)の場合」5人以下、それ以外の業種の場合20人以下である小規模事業者が対象です。自らが持続的な経営に向けた経営計画を作成する必要があり、それに要する経費の一部を補助するものです。
補助対象経費は、新商品の試作品開発費用、新サービスを紹介するチラシ作成代、販路開拓を行うための旅費、事業遂行に必要な製造装置の購入やアルバイト費用等となります。
一般の通常枠以外に次のカテゴリーがあります。
●「賃金引上枠」・・最低賃金を、地域別最低賃金より+30円以上とした事業者
●「卒業枠」・・小規模事業者として定義する従業員数を超えて、規模を拡大する事業者
●「後継者支援枠」・・アトツギ甲子園のファイナリスト等となった事業者
●「創業枠」・・過去3年以内に「特定創業支援事業」による支援を受け、創業した事業者
上記の4つの枠の事業者で、2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者のうち、適格請求書発行事業者の登録を受けた場合に補助額を一律50万円上乗せとなる「インボイス特例」の拡充措置が行われ、補助上限額が最高250万円にまで拡充されています。
補助率・補助上限は以下の通りとなります。
類 型 | 通常枠 | 賃金引上げ枠 | 卒業枠 | 後継者支援枠 | 創業枠 |
補 助 率 |
2/3 |
2/3(赤字事業者は3/4) |
2/3 |
2/3 |
2/3 |
補助上限 |
50万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
200万円 |
インボイス 特例 |
50万円 ※インボイス特例の要件を満たしている場合は、上記補助上限額に50万円を上乗せ |
第12回の申請受付締め切りが6月1日(木)となっております。
詳しくは商工会議所地区小規模事業者補助金事務局HP等をご確認下さい。