新卒・中途採用による外部人材の確保や教育訓練により人材育成を行う企業を支援する税制です。もちろん、「所得拡大促進税制」も令和5年3月末まで併存しています。
Q1.適用期間は | A1.令和3年4月から令和5年3月末までに開始する各事業年度。 |
Q2.制度の利点は | A2.新規雇用者給与等支給額を前年度より増やすと法人税の税額控除ができます。教育訓練費を増やすと控除税額が上乗せされます。 |
Q3.制度を利用する条件とは(通常) | A3.「新規雇用者給与等支給額」が前年度より2%以上増加すると「控除対象新規雇用者給与等支給額」の15%を税額控除できます。
※国内新規雇用者のうち、雇用保険の一般被保険者に対して雇用日から1年以内に支給する給与支給額の増加が条件です。 ※国内雇用者には、役員や役員の特殊関係者は含めません。 ※給与支給額は、給与所得になる給与で賞与も含みます。 |
Q4.制度を利用する条件とは(上乗せ) | A4.「教育訓練費の額」が前年度より20%以上増えると、通常の税額控除に5%上乗せして、20%の税額控除ができます。
※教育訓練の対象者は国内雇用者で、新規雇用者に限定されません。 ※教育訓練費の対象は、外部からの講師の招聘に対する費用や謝金、施設の利用料、外部参加の授業料など多岐にわたるので、経済産業省のHPで確認が必要です。 |
Q5.税額控除の上限について | A5.税額控除額は法人税額等の20%が上限になります。
中小企業では、「所得拡大促進税制」との選択適用になるので、有利不利の検討が必要です。 |
Q6.事前の届出は | A6.税務申告前の事前手続きは無く、申告書に必要事項の記載をした明細書の添付が必要です。 |
Q7.青色申告要件 | A7.青色申告が要件です。中小企業に限定されず、全企業が対象です。 |
Q8.未払給与、前払給与の扱い | A8.未払給与は計上した際に損金算入されるので、計上時の年度の支給額に含めます。前払給与は計上時に損金算入されないので、その後の損金算入年度の支給額に含めます。 |
(文責 税理士 大和田利明)
中小企業は、2021年4月から正社員と非正規雇用労働者(短時間労働者・有期雇用労働者)の間の不合理な待遇差の解消(いわゆる「同一労働同一賃金」)が求められます。今後どのような対応が必要になるのか社内制度の点検を行いましょう。
① 「同一労働同一賃金」は不合理な格差をなくすためのルール
「同一労働同一賃金」とは、正社員と非正規雇用労働者との不合理な待遇差を解消するための取り組みです。企業によっては、パートや派遣社員といった非正規雇用労働者は給与水準が低いほか、賞与や通勤手当がない、福利厚生が受けられないといったケースもありました。もちろん、業務内容や職責などによって契約条件・報酬などに違いが出てくることはあります。しかし、同じ会社で同じような業務をしているのに、雇用形態によって大きな格差が生じるのは合理的とは言えません。そこで、雇用形態によって差をつけるのではなく、業務の内容やポジションに基づいて条件や報酬を定めるのが「同一労働同一賃金」の考え方です。
違反した場合の罰則規定はありませんが、従業員が訴訟を起こした場合には損害賠償請求の根拠となり得るため、企業としても雇用形態による格差是正に取り組む必要があります。
② 規定の整備や従業員に対する説明が求められる
具体的な取り組みとして厚生労働省は3つのポイントを挙げています。
1つ目のポイントは「不合理な待遇格差をなくすための規定の整備」です。その柱となるのが職務内容や配置の変更などを根拠に待遇を決定する「均衡待遇規定」と、職務内容などの条件が同じであれば待遇面でも同様に扱う「均等待遇規定」です。(詳しくは厚生労働省HPを参照して下さい。)この2つの規定によって不合理な格差を設けることや差別的な取り扱いを禁止します。また、派遣労働者の場合も派遣先で同じような職務に従事している人との「均衡・均等待遇」が求められます。
2つ目のポイントは「労働者に対する待遇に関する説明義務の強化」です。非正規雇用労働者が正社員との間の待遇差に関してその内容や理由の説明を求めた場合、企業はそれに対応しなければなりません。説明を求めた労働者に対して不利益になるような扱いをすることも禁止されます。
3つ目は「行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備」です。労働者と企業の間に紛争が生じた場合、行政が助言や指導を行います。裁判になると双方にとって時間や費用、プライバシーなどの面で負担が生じるため無料・非公開で紛争解決手続きを行うこともできます。
③ 自社に不合理な格差はないか、見直しと改善を
実際に企業が「同一労働同一賃金」に取り組むためにはどのようなことから始めればいいのでしょうか。厚生労働省が「パートタイム・有期雇用労働法対応のための取組手順書」を発行しています。この取組手順書を参考にステップに沿って自社の状況を確認しておきましょう。
少子高齢化による生産人口の減少に歯止めがかからない中で、優秀な人材を採用・確保することは企業とって重要な課題になりつつあります。雇用形態にとらわれず従業員に対して公正な評価や待遇を提示できることは、従業員の満足度やモチベーションの向上につながります。従業員がやりがいを持って働ける環境を作ることは企業のイメージアップにもなり採用面でも大きなメリットになるでしょう。