相続税申告の際に、相続人の方々から不要な土地の処分についての相談を受けます。東北という土地柄
か、農地の処分で困るケースが増えてきています。
解決案の1つとして相続した土地を国に帰属させる制度が令和5年4月よりスタートしたので、この概
略を案内しています。
1.制度の利用条件
●対象者は相続や遺贈で土地を取得した人
●対象土地は具体的には、耕作していない農地、山林、建物のない遊休地等
相続等で取得した土地なら、10年以上前に相続した土地も対象です。
2.制度の手続きの流れ
①相談:土地所在地を管轄する法務局での事前相談から始まります。
②申請書提出:審査手数料(1筆当たり14,000円)を納付し、申請書を提出
③審査:法務局が書類審査と現地調査をする時間がかかります。
④承認:承認後に10年分の土地管理費相当額(基本1筆あたり20万円)納付
⑤国庫帰属:上記負担金を納付後に土地が国庫に帰属します。
3.この制度のメリットとデメリット
メリット | デメリット |
〇不要な土地を手放すことができる | ●制度を使える土地が限られる |
〇自ら買い手を探す必要がない | ●手続きに費用がかかる |
〇引き渡し後の管理が安心できる | ●手続きに手間と時間がかかる |
※特に費用については、土地に応じて細かく規定されていること、金額が大きくなる可能性が有るので、事前の見積もりと資金の準備は必要です。
4.この制度の支援資格者は誰か
申請手続きの提出代理が可能な資格者は司法書士となります。日本司法書士連合会では申請者への支援
を公式に掲げています。
上記の①相談は利用者が直接に法務局で対応しますが、具体的な書類作成やそれにかかわる法律判断は
専門家に依頼した方が、安心できます。
5.この制度の利用状況
●制度開始からの総申請件数は令和6年12月末時点で約3,200件程度
●そのうち帰属が認められた件数は、約37%の約1,200件程度
それ以外にも申請期間中に引き受け手が見つかり取り下げられた件数も500件程あります。
申請の地目では「田畑」が最も多く、37%を占めています。
(文責 税理士 大和田利明)
相続税の調査と聞くと、亡くなった方(被相続人)の調査をイメージする方が大半では
ないでしょうか?ところが相続税の納税義務者は、相続又は遺贈により財産を取得した者
(相続人等)です。つまり相続財産を取得した皆様が、実は相続税調査の主体なのです。
以下は令和6年12月 国税庁公表の調査事績等です。
実地調査事績
令和4事務年度 | 令和5事務年度 | 対前事務年度比 | ||
① | 実地調査件数 | 8,196件 | 8,556件 | 104.4% |
② | 申告漏れ等の非違件数 | 7,036件 | 7,200件 | 102.3% |
③ | 非違割合(②÷①) | 85.8% | 84.2% | ▲1.7P |
注:事務年度7月1日から翌年6月30日
簡易な接触の事績
令和4事務年度 | 令和5事務年度 | 対前事務年度比 | ||
① | 簡易な接触件数 | 15,004件 | 18,781件 | 125.2% |
② | 申告漏れ等の非違件数 | 3,685件 | 5,079件 | 137.8% |
③ | 非違割合(②÷①) | 24.5% | 27.0% | +2.5P |
これらからは、いつ申告書を提出したものの調査なのかが、判別しません。その点は
補足資料から、例えば令和5事務年度は令和3年1月1日から12月31日までの間に
相続開始となったものとうかがえ、この流れは近年一定しているようです。
令和5事務年度(令和3年分)で、もう少し詳しくみていきましょう。
申告書提出件数は169千件ですが、相続税額があったものは134千件です。これに
対し実地調査8.5千件ということは約6%。簡易な接触18千件ということは約14%。
合計2割くらいで、相続税調査等が行われているようです。
弊社では、相続税申告にあたり、書面添付を行っています。これにより、調査開始前には
税理士に意見聴取があります。それでも疑義等があると調査となります。
法人税等の調査とも勝手が違いますし、相続人だと調査が初めての方も多いでしょう。
調査が、どのように進んでいくのか、事前に御案内いたします。